ふわふわ。
「……計画してます?」
「以前にも行きたいとおっしゃってましたし。よければ来週」
「…………」
追い込んできた。
「それに嫌われていない様ですし」
嫌ってもいないけど……
確かに、そうだけど。
カタン……と、小さな音がして、倉坂さんが近づいてくる。
近づいてきて、背後に回るとポンポンと頭を叩かれる。
「あまり無理はしないで下さい」
そう言って、書類を半分持って自分のデスクに戻る倉坂さん。
……仕事の事?
それとも、泊まりで温泉に行く事?
思えば、倉坂さんていつも待っていてくれている。
「焦らないんですね。倉坂さんて」
「焦ると失敗しますから」
それは仕事?
そうじゃなくて、私達のこの微妙な関係?
どっちつかずで曖昧で、なんと言うかふわふわ宙ぶらりん。
あー……頭が仕事モードから外れていく。
「俺はガツガツ行くような年齢でも性格もしてませんし」
カタカタとキーボードを打つ音が響いてきて、その音に耳を澄ませる。
うん。
この音って好きだなぁ。
思えば残業中の、昼間とは違った顔を見せるフロアも好き。
普段と変わらないはずなのに、普段とはまた違った空気感。
それは疲れたり、アットホームだったり、ゆっくりだったり早かったり。
何だか色んな事があったなぁ。