ふわふわ。

「私って、仕事が好きみたいです」

「存じてます。残業を笑顔で引き受ける人は希です」

「残業中の雰囲気も好きなんです」

「そんな感じですね」

「なので、個人的な時間が少なくて、デートの暇もないかもしれません」

「その点は心配してません。逆に俺も残業多いですし」

「……家庭向きではありませんけれど」

「家庭にはいれとは……」


暫く沈黙が落ちて、カタカタとキーボードを打つ音だけが響く。


うん。
好きな音。



それから、ガタンと音を鳴らしながら倉坂さんが立ち上がった。


「俺は、もしかしてプロポーズされてますか?」

「倉坂さんて、いつから一人称が俺になったんですか?」

「結構前から……ではなくて、今のプロポーズですよね?」

「そのつもりでしたね」


いいんじゃないかな、と、思ったのよ。


倉坂さんて、きっと私の事をすごくわかってくれている。

それは、よく見ていてくれたと言うことだし……

焦らず待っていてくれたし、追い込まれても嫌じゃなかった。

嫌じゃないと言うことは、もう好きでしょう。
好きなんでしょう。

理解しちゃったら、答えるしかないじゃない。
タイミング外したら、私はきっとウダウダ考え出す。
考えて、きっと照れ始める。

照れたらきっと答えない。


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