桃色の雫
床と同じく古くなった階段を登ると入学式を行う体育館が見えた。

引き戸を開けると体育館にはもう、ほとんどの学生とその保護者が座っていて入学式が始まるのを待っていた。

『あの〜デザイン科ってどこですか?』

母が近くにいた若い男性教員にそう聞くと、その人は母の姿をみてたちまち瞳孔をパッと開いて、笑顔で案内してくれた。

今まで母に同じような反応を示す人を沢山見てきたけれどわたしは毎回それを見るたび気持ちが暗くなる。

本能的な事だから仕方がないけれど。
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