死神男子と幸運男子
はじまり
無色透明
毎日あの日から見るものが色あせていく
今から十年前
保育園などに行かなかった僕は
初めて友達が出来ると胸高ぶらせ
小学校へ入学した
入学すると1人の男の子と打ち解けた
僕たちは蝶や虫が好きな共通点から
毎日図書室で図鑑を見て過ごしていた
初めて出来た友達に心の底から嬉しかった
けどあの日
いつものように集団登校していると
前の集団に最後尾で歩く彼の姿が見えので
思わず名前を呼んでしまった
立ち止まり振り返る彼は
丁度曲がり角から勢いよく出てきたトラックに
跳ねられてしまった
僕の目の前で宙に跳ぶ彼
そしてコンクリートに打ちつけられ
赤い水溜まり
僕は先生に家に連れ帰され
詳しい状況を聞かれた
けど先生の声はまるで
耳に何かの膜が出来たかのようにくぐもって聞こえ
全く頭に入って来なかった
それから先生のケータイに
彼が病院で亡くなったことを告げられた
自分がもしあの時名前を呼ばなければ
それだけが幼い僕の脳を支配した
それからというもの
引っ込み思案だった僕は友達も出来ず
1人で小学校生活を終えた
中学に入るとやはり友達が出来る気配はない
部活は強制参加と言われ
渋々、唯一活動回数の少ない
ボランティア部に入部した
そこでは早速
病院で入院患者と触れ合う企画的なのを
させられた
僕は1人のおじいさんの話し相手に
なっていた
僕が来るといつも嬉しそうに話してくる
このおじいさんは少し前に発作で入院していた
もうすぐ退院だと言っていた
退院したら孫に会えると
その話しばかりしていた
おじいさんと出会って一週間がすぎ
土日は部活が無く
2日明けにボランティアで病院に訪れた
僕が担当していた例のおじいさんの病室にくると、おじいさんのネームプレートが
無くなっていた
もしかして、この2日の間にもう退院してしまったのか
そう思い病室を開けると
中はガランとしていて、ベッドは綺麗に
片づけられ一面真っ白といった感じた
「あ、あなたはボランティアさんの子ですよね?」
後ろから看護婦が話しかけてきた
心なしか表情が曇っていた
「ここのおじいさん、金曜日の夜に亡くなられたの…」
「えっ……」
最後に僕が会いに行った日の夜
「本当に残念だったわ…急に亡くなられて…
そんな亡くなるまでの発作でもなかったのに」
そういうと看護婦は出て行った
その時確信した
僕は…
“死神だ”って
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