死神男子と幸運男子

矛盾







「おーい、ひなびーー!おはよう!」


「ひなびー、一緒に昼ご飯食べよう!」


「体育、俺の組と同じだったんだな!一緒に行こう!」


「おーい、鄙!帰りに遊ぼうぜ!」


「ひなびー!」













自分でも驚きだ

まさかこんな奴が居たなんて…


もう一週間は過ぎるというのにまだピンピンしている



しかも付きまとってくるのが激しくウザい



「しぶといなぁ…」



そんな自分でも恐ろしい一言を呟きながら
生一から逃げるように廊下を歩く




やっと独りになれたと思ったそのとき





「あ、やっぱり此処に居たか!俺の感は外れナシだなっ!」



後ろから生一の声がした




「お前、ほんとになんなの?全然死なないし!」

「いや、少し効果が出てきたんだ。」

「は?」

「今日生まれて初めて転んだ!!」

「…………。」



一週間付きまとわれた結果が転んだだけ?




普通の人ならもうとっくに死んでいる





「ほら、ここ。見てみ、生傷っ!」


嬉しそうに擦りむいた膝を見せてくる



僕はその傷を指で思いっきり押してやった




「い″っっった!!」



膝を押さえ苦痛に顔を歪める生一


指先を見ると微かに血が付着していた
それを生一のシャツで拭いながら



「どう?初めて痛みを味わった感想は?」




どうせ少しでも痛みを味わえば
死のうなんて怖くて出来なくなるだろう







生一は目に微かな涙を浮かべながら



「すごく…生きてるって実感してるよ。」



と笑いながらそう言った






理解できない






僕は自分でも信じられない感情が芽生えてきた






奴を…自分の力で葬ってやりたい、と



一週間で超幸運の男に怪我を負わせられたのなら、もう少し頑張れば死に導いてやれる


すくなとも、僕はさっきのように生一に少しなら痛みを与えることが出来るようだ




「それで?まさか掠り傷見せるために来たわけじゃないよね?」


目を細めながら僕は言った


「あ、そうそう。鄙、今日家へ遊びにおいでよ!」


「なんで僕が放課後までお前と居なきゃいけないんだよ。」


「だってより長い時間居た方が効果でるかもしれないし、なんなら鄙ん家行く?」


生一の家に行く、生一が家に来る
天秤にかければ当然


「いや、お前の家に行くよ。僕の家はダメだ。」





こうして人生で初めての放課後の寄り道の予定ができた







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