イケメンヤンキーに愛されて

いっそ真実をかくして、『亜弓ちゃんは遊びに行ったんだよ。しばらく帰ってこないかもしれないんだ』と言おうと思った。
このウソは突き通そうと思えば、突き通せるものだろう。

でも、それじゃいけない。
幼なくたって真実を知る権利はある。
だから、あたしは教えることにした。

外を眺めるために台に乗っている姫ちゃんを後ろから抱きしめた。
すると、姫ちゃんは不思議そうにしながらあたしの顔を見た。

「愛結ちゃん、どーしたの?どこが痛いの?姫が助けるから」
「ううんっ・・・、痛く、ないよ。大丈夫」

あたしはまた自然と涙が出てきていた。
ぽた、ぽた、と洋服に涙が落ちてしみこんでいる。

泣いていても余計に姫ちゃんを心配させるだけだ、と考え直し、必死で笑顔をつくった。

「姫ちゃん、亜弓ちゃんはね、帰ったの」
「おうちに?」

姫ちゃんはきょとん、と大きな瞳で見つめ返してきた。
< 203 / 281 >

この作品をシェア

pagetop