カルネージ!【完】
それからまた歩き始めた彼を追って、その背に問いかけた。
「待ってよ、どういう意味?」
「エロい奴にしかわかんないってこと」
「……阿久津はエロいの?」
「ま、それなりにはね」
クックと喉の奥で笑い声を立てる阿久津になんだか敗北感を覚えて、眉を顰める。
なんか、バカにされてるみたいで悔しい。
更に訳を聞こうと口を開きかけたところで、不意に立ち止まった彼の背中に思い切りぶつかってしまった。
痛い。いきなり止まるなんて……!
だけど文句を言ってやろうとした私より一歩早く、阿久津がぐっと私の背に合わせるように腰を曲げる。
顔が近い。お互いの間に10センチ前後の空間しか残っていなかった。
一瞬、怯んで何も言えなくなった隙に、ここぞとばかりに目の前の男は妖艶に微笑む。
「それ以上聞いたら栄美(エミ)ちゃん、恥ずかしい気持ちになっちゃうけど、いいの?」
「……はっ……?」
「俺にすごいこと、話させないでよ」
「す、すごいことって……?」
「卑猥なこと。試しに聞く?」
い、いい! っと叫ぶように言って、大慌てで体を仰け反らせ阿久津から離れた。