カルネージ!【完】
さすがにクリスマス本番なだけあってか、すごい数の人が出入りしていて、ガラスの窓越しに店内の慌ただしい様子が手に取るように見て取れた。
予約も何もなしに、いきなり行ってチキンを買ってくるのはなかなか大変な所業だと思うのだけど……。
「だめ?」
小首を傾げて少し口角を上げたその表情と仕草があざとくて、何も言えなくなってしまう。
私は阿久津のこういうところに弱い。と、彼自身も知っているのだろう。
否定も肯定もせずにじっと阿久津を睨みつけていれば、可愛い自分を演じるのにも飽きたらしいこの最強に気分屋な同級生は、眉を顰めて顎で私を指した。
「ほら辻野、早く行って買って来て」
「……私が買ってくるの?」
「当たり前じゃん。何のためにいるの? お前」
「鬼か!」
ん、と1000円札を差し出した阿久津に逆らう術を知らない私は、それを渋々ながらも大人しく受け取る。
「阿久津はどこにいるの? 寒い中外で待ってる気?」
「まさか。人ごみも嫌だけど寒いのはもっと嫌い。あそこの店で待ってるから買えたらメールして? 冷めないうちにね」