カルネージ!【完】
どうしようおかしい、阿久津が優しい……!
「待って、チキンもお金出したの阿久津じゃん、せめてそれ、私がお金払う!」
「気にしないでいいよ。辻野金ないじゃん」
「私が万年金欠だと思ったら大間違いだよ……!?」
「あ、あそこ空いた」
ツリーの下、待ち合わせ場所だったそこのベンチのひとつが、それまで独占していたひと組のカップルが立ち上がったことにより空いた。
素早くそれをキープして腰かけた阿久津の横に、私も数十センチの間を開けて座る。
「阿久津~、……ほんとにこれプレゼント?」
「賄賂とでも思っておけば?」
「いやいや何のですか。いくら私でも、犯罪とか法を犯すことには手え貸さないよ!?」
「ハッ、そんなバカなこと俺が考えるわけないよね?」
ごもっともだ。
……いやでもしかし、こんなに上手い話があるものか。
突然で予想外の出来事に驚いて少し興奮してしまったけど、冷静になれ、辻野栄美、冷静になれ……!
相手はあの阿久津だ。
艶やかに微笑んでいる隣の男にひとしきり目を細めた後で、それと見比べるように手元の紙袋へと視線を落とした。