カルネージ!【完】
――予想していた通り、すごい人だった。
クリスマスイブの今日、街の中心の巨大ツリーにはカラフルな電飾に光が灯されていて、そこはカップルたちの恰好の待ち合わせスポットへと化している。
「待った?」
「待った」
そのツリーを囲むようにして設置されていたベンチのひとつに堂々と腰かけていた阿久津(アクツ)が、偉そうに私を見上げ、立ち上がる。
「ごめん、道が混んでた」
「あっそう」
「ごめんってば」
「別に怒ってない」
阿久津は少々面倒くさい男なのだ。
たった十数分の遅刻で、腹を立てる。私とちっとも目を合わせたがらない程度には。
不機嫌そうな男の気分を変えようと、何か空気が明るくなるような話題を探して、わあ、と、少しわざとらしく声を上げる。
「すごい綺麗なイルミネーションだね」
「ほんと、毎年思うけど、電気料金ってどっから出てるんだろうね。バカ高そう」
「……」
「所詮色鮮やかな電球じゃん、ロマンチックとかって喜んでるカップルは何なの? 蛾かよあいつら」
「……」
「辻野(ツジノ)、ちょっとあの巨大ツリー、切り倒して来てよ」
――そもそも、私なんかに手に負えるような男じゃなかったのだ。