カルネージ!【完】
――阿久津は、この世の終わりだとでも言わんばかりの表情をする。
今にも白目をむいて、ふらりと倒れてしまいそうな勢いで。
「……ないと?」
「当たり前じゃないですか」
頷けば、今度こそ阿久津はどさりとその華奢な身をベッドに投げた。
それから枕に顔を埋め、途端に不機嫌そうなオーラを放ち始める。
「……辻野」
「はい」
「今日が何の日か知ってんの」
「もちろんですとも。バレンタインじゃないですか」
「……それなのに、……何?」
「阿久津にチョコを渡す予定はありません」
「……辻野の体を流れる血が全部チョコレートと入れ替わればいいのに」
「それ死ぬ!」
突っ込めば、のっそりと体を起こした青年がじっと私を恨めしそうに見つめた。
……そ、そんな顔されても……! ないもんはないのだ。
――2月14日、土曜日。
わざわざ私を自宅にまで呼び出した阿久津の目的はそれだったのか。