カルネージ!【完】
なんとも彼らしいと納得する。
街中では、綺麗にラッピングされたチョコレートが、どの店でも一番目立つ位置で売られていた。
勿論彼氏も好きな人もいない私に、そこを素通りしない理由はないわけで。
少しばかり親しいクラスメイトの男子と会う約束をしていたって、私たちは付き合ってなどいないのだから、チョコを買うなんて発想まるでなかった。
……というわけではないんだけれど、
「……だって阿久津、甘いもの苦手だって言ってたじゃん」
そんな彼に義理でチョコレートを買うのは躊躇われて、結局は用意しなかった。
「今日は食べたい気分だった」
「……チロルチョコならあるけど、……食べる?」
「……食べる」
昨日学校で友達に配った余りがコートのポッケに入っていたので、四角いそれを阿久津の手のひらに乗せてあげる。
そうすれば彼はすぐに口へ含み、
「甘っ」
眉を顰めつつ少し満足そうだ。
……こんなのでいいのか。