カルネージ!【完】
「辻野、誰かに本命チョコあげたりしなかったの?」
「……あげたりする予定があるなら、今日ここにきてたりしないよ」
「だよね」
バカにするように鼻で笑った阿久津に軽く唇を尖らせ、何も言われていないけれどその場に座り込みコートを脱ぐ。
この部屋に来るのは3回目だけれど、前に来た時と同様に小奇麗で几帳面な彼らしい片付いた部屋だった。
共働きの阿久津の両親は多忙で、今日はこの広い家で二人きりだ。
「阿久津は、誰かにチョコもらったりしなかったの?」
「もらったよ」
「えっ!?」
あっさりと涼しい顔で答えた阿久津は、勝ち誇った表情で机の上を指さした。
そこには綺麗にラッピングされた市販の四角い箱が二つ置かれていて、一瞬思考が停止する。
……なんとなく、阿久津は、誰からもチョコレートをもらっていないような気がしてたから。
だから、私を遊びに誘ったんだと思って、今日、ここへ来たから。