カルネージ!【完】
「……阿久津、あからさまに僻みすぎ」
「辻野が遅刻したせいで俺が独りぼっちで待ってた13分間、一体何組のカップルの『待った?』『全然待ってないよ』って会話を聞かされたと思ってんの?」
「……うわあ、あのお店のくまのぬいぐるみ、超かわいい~!」
「辻野はラッキーだよね。あと数秒でも遅れてたらカップルの熱が致命傷になった俺の死体を祀り倒すことになってたよ」
「……」
「非リア充の身には毒を盛られるより致命傷」
「はい、そうですね、私が悪いです、ごめんなさい」
面倒くさい展開になりそうなことを見越して、適当な店のぬいぐるみを褒めて話題を変えようとしてみたけれど、……彼に口喧嘩で勝とうなんて思っちゃいけないんだ。
無駄な悪あがきを笑うように、ぬいぐるみが私を見ていた。
ふっと鼻で笑った男は、今度は気をつけて、なんて言って私を置いて歩きだす。
恋人たちが愛を分かち合う聖なる夜、何ゆえ私はこんなに気難しい同級生と過ごさなければならないのか。
「どこ行くの?」
雪が敷かれた道を、転ばないように気をつけて阿久津を追って聞いた。
「ラーメン屋」
「えっ」
「ラーメン屋」
どこもかしこも、ネオンの光が眩しい。