カルネージ!【完】
「……辻野、いつまでそいつと話してんの」
海斗さんに向けて愛想笑いしていれば、急に私の目の前で立った阿久津が不機嫌そうに言った。
「えっ? いいじゃん、もっと3人で話そうよ。栄美ちゃんから色んな話聞きたいし!」
「無理」
「いやいやいや、私は全然……」
「無理だから。早く」
イライラした様子の阿久津にビビり、はい、と小さく呟いてリビングを去る彼の後ろ姿を追いかける。
海斗さんがブーブーと文句を言う声が聞こえてきたけれど、阿久津は全く意に介す気はないらしい。
……ていうか。
「阿久津、風邪引いてる?」
「なんで」
「いや、声掠れてるから……」
マスクしてるから、そのせいで声がくぐもっているのかと思ったけれど、明らかに鼻声だ。
よく見れば、歩くスピードもいやにゆっくりだし、ダルそうだし。
「……私、今日は帰ろうか?」
「辻野に風邪移す気満々の俺の前でよくそんなこと言えるね?」
「どうしよう今すぐ帰りたい!」
「……うるさ」
移す気満々って言っちゃってるじゃんか……!