カルネージ!【完】
その一瞬、同時に阿久津の私の顎にかけていた手から力が抜けたのを感じ取り、彼の手を払いのける。
それから、殆どアタックするように全身で阿久津の肩を押した。
彼の薄っぺらい体はいとも簡単にバランスを崩し、ベッドに沈む。
阿久津が怯んでいる隙にその頭を挟むようにして布団に手をつき、覆い被さるようにして阿久津を見下ろした。
激しく動いたせいか、ベッドがぎしりと音を立てる。
どうだ。してやったり。ザマーミロ。
得意になって満面に笑みを浮かべれば、珍しく焦った風の阿久津が私を睨みつけた。私の方が優勢だから、全然怖くもないけど。
「……なんで辻野俺のこと押し倒してんの」
「やらなきゃやられるかなって思って」
「それ、聞く人が聞けば凄い発言にとられるよ」
「え? 何が?」
「……いいよ、どうせ辻野にはわかんないから」
よし。この前押された借りは返した。
阿久津が動揺する顔も見られた。満足だ。私だってやるときはやるんだぞ。