そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~

会社から、彼女が消えた

…資料室に向かった二人。時間が経っても、戻る気配がない。
俺はイライラしながら、仕事を続ける。

「…そこ、間違えてますよ」
「・・・え?」
「…変換ミス」

「・・・・」

パソコンを指差しながら、変換ミスを教えてくれたのは杉下。
俺はアッと気付いて、変換ミスを訂正する。

「珍しいですね、大谷さんが初歩的なミスするなんて」
「…俺も人間だから」

そう呟けば、一瞬驚いた顔をした杉下だったが、プッと吹き出した。
俺はそれを見て困った顔をする。

「…ですね、大谷さんは機械じゃないんですから」
そう言うと、自分のデスクに戻っていった。

ふぅとため息をつき、気を取り直す。
その時、外線が入った。

・・・何やら発注ミスがあったとの連絡。
俺はパソコンの電源を落とし、カバンを持って立ち上がる。

…向こうのデスクでは、杉下は電話中。

俺は黒板に、外回りと書き、杉下に手を振った。

「…分かりました・・・あ!大谷さん!」

慌てた杉下の声が聞こえたが、俺も急いで向かわなければならず、急いでオフィスを出ていった。

…全くの予定外の仕事。しかも長引いて、会社に戻ったのは定時をとっくに過ぎた頃だった。
・・・杉下は私用の為、定時で帰った様子。

…あの二人は?
…いつ取りに来たのか、藍子のカバンも、澤田のカバンもなかった。

…もう、帰ったのだろうか?
美雨の携帯を鳴らす。

『…お客様がおかけになった番号は電源が入っていないか、電波が届かない為…』
…携帯につながる事はなかった。
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