そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~
「…お父さん?」
「・・・なんだ?」

寝室。私は父に声をかける。

「心配してくれて、ありがとう」
「…私の娘なんだ、当たり前の事だろう?」

「…お父さん、大好き!」
「ワッ!・・ナ、何してる?!いい歳した娘が」

私は父の背中に抱きついた。
父は慌てている。

こうやって父に抱きつくのは、小学生の時以来かな。


「お父さんが買って来てくれたケーキ、一緒に食べよ?
私、お父さんが好きなハーブティーいれるから」

そう言って微笑めば、父は振り向き、優しい笑みを浮かべた。


「お前の淹れてくれたハーブティーが、一番うまいからな」
そう言うと、歩き出す。


「…そうですか?・・・それじゃあ、私はもう淹れてあげませんから」
と、母がボソリと、呟く。

「え?いや・・・その・・・」
母の言葉に、父はシドロモドロニなる。

そんな二人を微笑ましく見つめる。
昔から、本当に仲のいい夫婦。

私もいつか、こんな家族が出来ればいいと思う。



…ケーキを堪能し、しばらくして、私は実家を出た。


…もちろん行先はただ一つ。
私の大好きな場所。

…大好きな人がいるあの家。
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