そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~
…きゅ。

私は勇気を振り絞って、修のスーツの裾を掴んだ。

修はそれに驚いて、私に視線を落す。

「…大谷さんが傍にいていいって言ってくれるなら、います…」

俯いたまま、そう言った。

俯いてないと、言える言葉じゃなかった。

…好き、なんて言えないけど、修の傍にいられるなら。

それだけで、嬉しいから。

…ドキッ。

スーツを掴む手を、優しく握られて、心臓がはねた。

「飯食って帰るぞ」

「…へ?」

「腹減った」

「…はい」

拍子抜けする言葉に、少し笑ってしまった。

「大谷さんの奢りで」

「…ったく、わかった」

そんな事を言い合いしながら、でも、2人の手は、しっかり握られたままで…

その手の温もりがとても心地よかった。
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