そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~
「お、お疲れ、大谷、遅くまでお疲れ…。

ぁ、その子、新人の紅一点・・・名前は」

そう言って小首をかしげる通りすがりの人事部部長。


「矢沢です」


「あ~そうそう。君も遅くまで大変だね、お疲れさん」

それだけ言うと人事部部長は、行ってしまった。


「・・・驚かせやがって」

「・・・へ?」

「いや、サッサと帰るぞ」

「はい」

…社内では、私に触れるなんて事はしない修。

それはしょうがないよね、誰に会うかなんてわからないし。

恋愛禁止なんて規定はないけれど・・・

噂になると、何かと面倒くさいし。


少し離れた距離で、同じ場所に帰る私たち。

…同じ電車に乗り、同じ駅で降りた。


「・・・ん」

「・・・ん??」

突然手を差し出され、私は意味が分からない。


「怖がりは、手」

「・・・・はい」

さっきの私の言葉、ちゃんと心の片隅に入れててくれたんだ。

その事が凄く嬉しかった。
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