そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~
「・・・でも」

そう言って他に言葉が出ない私を見て、

修は困ったように笑った。


「・・・そのうち出ていくもんな。

何度も引越しなんてもっと面倒、か」

それだけ言って、また歩き出した。

・・・一歩前に進みたい。


そう思って言葉を発しようとした時だった。


「・・・・」

私は無言のまま、ぎゅ~っと、修の手を握りしめた。

その次の瞬間には、体が震えてた。


修はパッと振り返って私の顔を見た。

「…どうした?そんなに震えて?」

「・・・・」

「やざ・・?!」

怖くて、恐怖でどうにかなりそうだった。

・・・だって。

私は、修の腕の中に逃げ込んだ。

怖くて、怖くて。


「矢沢、どうした?」

「・・・つが」

「え?」

「アイツが、・・・そこにいた」
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