そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~
私の頬に手を添えた澤田さんは、
そう言ってニコリとした。

…なんで、今日の澤田さんは、こんなにも、甘々なんだろう。
…心臓に悪い…悪すぎる。

「手を…手をおろしてください、人が見てます」
なんとかその言葉を口にした。

「…それはいけないな。
会社に戻ろうか?」

「はい!帰りましょう!」
そう言ったかと思えば、早足になる私を、可笑しそうに澤田さんは眺めていた。

…。

「只今戻りました」
そう言って、オフィスに入る。

「お疲れ様」
そう言ってくれたのは杉下さん。

「…」
不機嫌な顔で、こちらを見ている人が1人。

「…お疲れ様です。…大谷さん。
…疲れてるんですか?」
恐る恐る尋ねる、

「…鼻の下伸びてる」
「…は?」

「俺といる時よりも、楽しそうだな」
私にしか聞こえない声でポツリと呟いた
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