SELF ~本当の自分~
「お母さん……私、教師になりたいの……。
美術か、音楽の。だから……専門学校に行かせてください……」
震える声。
最後らへんはもごもごしてて、デクレッシェンドみたいに小さくなっていく。
弱いなぁ、私。
れのんみたいに、自分の意志をはっきり伝えられればいいのに。
「……好きにしなさい」
唇をきゅっと噛み締めていたら、お母さんが
やっと口を開いた。
たった一言。
呟くような声で。
……好きにして……いいの……?
そう言われて、うれしいはずなのに、
どこかもやもやした。
そっか。
『好きにしていい』
って裏を返せば、自分で決めるってことなんだ。
柚のことずるいなって思ってたけど、
自由って一番難しいことなのかもしれない。
……ごめんね、柚。