SELF ~本当の自分~
美術室のドアを開けると、思わず唾を飲み込んだ。
目の前に広がった景色は、半年前コンクールに出した景色と一緒で、あまりにカラフルだったから。
『大切なもの』
柚。
なっちゃん。
フウカ。
大好きな美術室。
使いふるされた絵の具。
落書きされてる机。
そして……
北原先生。
「お前たち、最後の最後くらい、笑えよ」
大好きな人の、大好きな笑顔。
「柚、奈々、フウカ、れのん。
卒業、おめでとう」
大好きな人が呼んでくれる、自分の名前。
先生が呼んでくれたから、外国人みたいな自分の名前、好きになったんだよ。
先生は、私が美術部に入部したときのこと、
覚えていますか?