偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
「すいません…栗原さん」

稜真さんは缶ビールを飲んでしまい、私の自宅の送迎は栗原さんが代行した。

「別に構わないよ」

栗原さんはハンドルを握りながら私に涼しげな声で返す。

「私と稜真さんが一緒に住むようになったら、栗原さんはどうするの?」

「俺?俺は出て行くよ。俺が出て行ったら、家事全般は地道さんが担当してね。稜真は何も出来ないから…」

「それはそのつもりですけど…」

「会長のハワイでのサプライズ婚には驚いたな」

「あ・・・そうですね」

私のエスコート役の相馬先生にも驚いた。ハワイでの沢山の想い出が走馬灯のように浮かぶ。

「私達…本当に結婚したんですね…」

「俺は稜真と地道さんの結婚が、偽装結婚だとは口外する気はない」

「元はと言えば…栗原さんが・・・」

「そうだったな…」

「出来れば…一緒に暫くは住んで欲しいんですけど・・・」

私は稜真さんと二人で住みたくなかった。

彼には全くキモチは無いけど…
私は稜真さんがスキだった。

もし、彼に甘い言葉を囁かれたら拒絶出来ないかもしれない。
それ位、彼に対する想いは切羽詰っていた。
稜真さんってチャラいけど、優しい所があって一緒に居て楽しいと言うか。
彼の天真爛漫な性格に惚れた・・・


「理由は?」

「稜真さんに襲われたら困るから…」

「一緒には住めない。俺、新しいマンション決まってるから…会長には早く出て行けと今朝も言われたし」

「それなら…仕方がないですね」






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