偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
*********

「はい、これ・・・」

美古会長が私と稜真さんを会長室に呼び出した。

「柾貴君、二人に渡して」

「承知しました」

栗原さんが応接ソファに座る私達にニヤリと笑う。
意味深な彼の微笑に首を傾げた。

「これって・・・」
大理石のテーブルに広げられた薄い紙切れは婚姻届。

「ちゃんと…私とマー君で証人の名前書いておいたから。後は貴方達が名前を書くだけ」
証人は会長と濱部社長の連名…印鑑までしっかりで押印されていた。

「お気遣いどうも…婆ちゃん」

稜真さんが婚姻届を半分に折り畳むと会長が眉間にシワを寄せた。

「この場でサインしなさい!!」

「え~っ!?あ…俺忙しいし…奈那子だって忙しいよな」

「サイン位出来るでしょ!!」

美古会長の剣幕に負けて、稜真さんは仏頂面でサインした。

「お前も書けっ。奈那子」

「はい」

私もその場でサインをする羽目になった。

挙式に始まり、婚姻届まで会長命令でさせられるとは。

「柾貴君が役所に届けて頂戴」

「承知しました。会長」

私達の婚姻届は栗原さんに一任された。



< 120 / 210 >

この作品をシェア

pagetop