偽装シンデレラ~キスの続きはオフィスの外で~
俺は奈那子を助手席に乗せて、アパートまで送迎。

「あれが奈那子の住んでるアパート?」

俺は昭和を感じさせるボロボロの2階建てのアパートを見つめて唖然とする。


「はい…稜真さんも将来社長夫人となる私の実家があれでは困るでしょ?」

「俺は別に…」

「お父さんが亡くなるまでは小さいですけど…ちゃんとした一軒家に住んでいました」

「ふうん」

「私のお父さんも一応町工場でしたが…社長でした」

奈那子は淡々と父親のコトを語った。

「そうか・・・」

奈那子は車のドアを開けて自分で降りようと腰を上げる。

「奈那子」

「何ですか?」

「何って…別に何でもない。おやすみ」

「お休みなさい。稜真さん」

俺はアパートの階段を上がる奈那子の後姿を見送った。



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