偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
私は柚希さんのビルの外まで送る。

「やっぱり…私…『フォルテ』の仕事は続けられません」

「俺は君に会いたい。勿論稜真は抜きだ。外で会ってくれるの?」

「それは・・・」

私は言葉を濁して、柚希さんの鋭い視線を避けるように顔を俯かせた。

「そんな困った顔しないで」

柚希さんは私の首許に自分のマフラーを巻き付ける。

「これは…柚希さんの・・・」

「ノースリーブのドレス姿では寒いと思って」

「もしかして…奈那子さんは稜真にホンキ?」

キモチを見透かされたように思って、顔を真っ赤にしてしまった。


「あんなに偽装結婚で悩んでいたのに…」

柚希さんに全てを打ち明けた夜は泥酔していて、記憶にない。

「でも、彼は…」

「今度店に来るのは来週の水曜日でいいよ。奈那子さん」

「柚希さん?」

「じゃーね」

柚希さんは私に短く手を振り、雑踏の中に消えた。

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