偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
「おはよー」

稜真さんが軽い口調で挨拶、振り返ると黒のバスローブ姿で立っていた。

「朝から俺の為に朝食作り?」

「いえ、私の食べたいから作っているだけです」
私はいつもの調子で可愛くない反応しか返せなかった。

「本当は稜真さんの為に作っている」と言いたいけど、肝心な言葉が喉にはり付いてしまい、出てこない。

「何だか…顔赤いぞ」

稜真さんは全く以前と変わらない態度で、接してくる。

私はどんな顔で彼と接すればいいのか…悩んでいると言うのに。


「稜真さん…昨日のコト覚えています?」

「昨日?あの毛布お前が掛けてくれたのか?」

「え、あ・・・そうですけど」

「ありがとう…感謝するよ」

「それだけ?」

「何か他にあるのか?」

「いえ、別に・・・」

稜真さん…まったく覚えていない。頭の後ろを鈍器で殴られたようなショックを受ける。

―――――――彼は昨日のコトを覚えていなかった。
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