偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
「失礼しました」

会長室から出て来たのは相馬早祐前社長。近い内に会長職に就任する。

「あら?貴方は…濱部さん」

「あ、はい…」

昔の輝ける美貌は今も健在で、立ち姿も凛としていて老いを感じさせない。
良く見ると目許や鼻筋の通った所は柚希さんにそっくり。

「会長に用?」

「はい」

「会長は今…柚希が診察してるわ」

「柚希さん、出社されているんですか?」

「今日は偶々…産業医として新入社員の健康診断の打ち合わせに来社していたのよ。会長が少し気分優れないと言うから…私が柚希を会長室に呼んだの」

「そうですか・・・」

「急ぎの用かしら?」

「いいえ…では出直します」

私はずれた眼鏡を指で押し上げて、踵を返そうとした。

「貴方に…少し話があるの」

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