偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
ムードの無い立ち食い飲み屋でのプロポーズ。
本当のプロポーズならば、きっと夜景が綺麗に見えるホテルでフレンチのフルコースを食べながら想い出に残るように演出するだろう。


「ご馳走様でした」

「で、地道…俺の頼み訊いてくれるよな」

「拒否出来ないと言ったのは濱部部長の方ですよ」

「ん、あ・・・そうだったな」

「謹んでそのミッションお受け致します」

『ハートフル』に勤務している以上は部長の命令を訊くしかない。総務の仕事は地味で単純作業が多いけど、オフィスの雰囲気は嫌いじゃないし、人間関係も良好、福利厚生もしっかりしているし、働きやすい。
何より私は家族の大黒柱。しっかりと稼いで来ないと母や妹が・・・

「・・・」

濱部部長か頬を染めてこめかみを指先で掻き始める。


「部長?」

「あ、いや…じゃ早速ホテルに行こうか?」

「はぁ?」

「…冗談だ」

「この結婚はあくまでも偽装ですよね」

「偽装偽装言うなよ。誰かに訊かれたらヤバい」

「承知しました」








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