偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
濱部部長は乱れた前髪を手櫛で直しながら、私の隣に腰を下ろした。

私は部長を意識しているのか否応なしに胸が騒がしくなっていく。

「二人で何の話してたの?」

「リー君は甘えん坊さんだから…地道さんのようなしっかりとした女性がパートナーとしてはお似合いだと言ってたの」

「それは昔の話だろ?」

「今でも甘えてるでしょ?」

「甘えてないし。俺はもう昔の俺じゃない」

会長からすれば部長はいつまでも可愛く甘えん坊さんの孫。

子供扱いされるコトに抵抗を感じる27歳の部長。

二人のやり取りは平行線だけど、微笑ましい。


私は思わずクスッと笑う。


「今、笑った?奈那子」

「つい…気を悪くしました?」

「別に…奈那子の笑った顔…素敵だ」

ドクンと鼓動が大きく高鳴って、頬に熱が帯び始める。


「…もっと笑えよ。奈那子」

「二人して独り身のあたしに当てつけ?話は終わり。二人とも仕事に戻りなさい」

「社長の椅子はいつくれるの?」

「そうね…相馬社長と相談しないと」

「早くしてくれよ」

玩具を強請るような雰囲気で社長の椅子を貰おうとする濱部部長。

「社長の椅子の重み理解しています?濱部部長」

「理解しているけど」

「貴方の言動は軽すぎます。社長に就任した暁には言動には気を付けて下さい」


「リー君は奈那子さんの尻に敷かれそうね。リー君が社長に就任したら、貴方を秘書に異動させましょう」

「!!?」


私が秘書!!?
栗原さんが嵩が外れたような笑い出した。

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