偽装シンデレラ~キスの続きはオフィスの外で~
俺がロールキャベツを食べていると父さんも帰宅した。

「見慣れない靴があると思ったが…稜真お前か・・・」

父さんはソファにブリーフケースを置いて食卓に座る俺に呟く。
濱部辰真(ハマベタツマ)…大手化粧品メーカー『星凛堂』社長。姉の彩名(アヤナ)の死をきっかけに俺に対しては冷たく当たるようになった。


「お邪魔しています…」

「母さんから訊いたぞ。同じ会社の同期の女子社員と結婚するらしいな」

「辰真さん…夕食は?」

「まだだ…支度を頼むよ。純名」

父さんは俺と話しながらも母さんの問いかけに応える。


「まぁな」


「俺達両親よりも先に祖母に結婚相手を紹介するとは…何事だ?先に俺達に紹介するのが筋だろ?」

「それは…俺だって結婚する気なんてなかった…でも…事態が急変して・・・」

「急変??まさか…相手の女性が妊娠しているのか??」

「辰真…さん…そう稜真を責めないであげて…」

「全く…お前は拓真に比べて…出来が悪すぎる…」

父さんは俺が問題を起こせば、何かと兄貴の拓真と比べる。
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