偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
「じゃまた…お母さんによろしく…」

「うん。お姉ちゃんはバイト?」

「うん」

「旦那様、早く紹介してね。お姉ちゃん」

私は弥英子の無邪気なニコニコ顔に安堵して病室を出た。

「今日の弥英子は顔色良かったな。調子がいいのね」

私は足早にエレベーターに乗ってエントランスへと降りた。

硝子越しに見える中庭は宵闇で真っ暗。
ベンチで眠っていた相馬先生の姿もなかった。


「誰を見てるの?」

私の背後に大きな影が重なる。振り返ると相馬先生が立っていた。

低く甘めの優しい声。
先生は笑い顔で私を見つめる。その瞳は優しく澄んでいた。

「いえ、別に…」

オフィスではクールで通っている私も相馬先生の前では別人に変化する。

「今夜は店に居るの?」

「あ・・・はい」

「俺も終わりだし、店に行くよ。よろしくね。カノンちゃん」

相馬先生は私の源氏名を呼んだ。

『ハートフル』の給料だけではやりくり出来ず、副業で新宿の小さなクラブで週3回ホステスのアルバイトをしていた。
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