偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
オフィスでは野暮ったい黒縁眼鏡を掛けて、真面目で目立たぬように振る舞う。

それには秘密があった。

「いらしゃいませ」

「来たよ。カノンちゃん」

コートを脱ぎ、スーツ姿となった相馬先生が私に挨拶をする。

「奥にどうぞ」

新宿の歌舞伎町の雑居ビルの3階にある小さなクラブ『フォルテ』
元シャンソン歌手のママが一人で切り盛りする店。
内装は昭和の時代を感じさせるノスタルジックな雰囲気で、店の隅にはママが趣味で集めたレコードの棚がある。



相馬先生が私の副業を知ったのは唯の偶然。

私はカウンターに入り、相馬先生のキープしたボトルでウィスキーの水割りを作る。


「相馬先生も足蹴にウチに来てくれるわね」

私と隣に立つママのミキさんが相馬先生の話相手をする。


「弥英子ちゃんが言ってたけど…カノンちゃん結婚するの?」

「あ・・・」
弥英子のヤツ…口が軽いんだから…






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