偽装シンデレラ~続きはオフィスの外で~
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私は稜真さんのキスに引き止められ、椅子に座る。

優雅な花の絵柄のダイニングテーブルの上にはこれまた豪勢なパーティメニューが並ぶ。

「この生ハムは拓真達がイタリア旅行のお土産にくれたのよ」

「兄貴、いつの間にイタリアに行ったんだよ!?」

「遊びじゃないぞ。仕事だからな」

「小陽さんも同行したの?」

「私は後から…ミラノで合流したのよ」

本場の生ハムか…
やはり、世界が違い過ぎる。海外旅行なんて…修学旅行で行った台湾と一昨年、社員旅行で行ったシンガポールと二度しかない。


「奈那子さんって…大人しい落ち着いた方ね」

小陽さんは私に晴れやかな微笑みを浮かべる。第一印象は温室に咲く可憐な花かと思ったが、話をしてみれば議員秘書を務めて、その後は拓真さんの秘書となり結婚に至った。
ご令嬢とは言え、世間の動向にも詳しく、拓真さん同様に高学歴。
おまけに美人だし、小陽さんは四文字熟語で表せば、眉目秀麗の女性。

稜真さんと結婚すれば、私達は義理の姉妹。
コミュ力は高い方だけど、自分よりもレベルの高い人達に躊躇していた。
印象的には問題ないが、この先…目の前の二人を上手に誤魔化せるのかと思うと不安に思っていた。

「そうでもないと思うけど…猫被ってんだよ。なぁ?奈那子」
稜真さんは私の好印象を貶めるかのような言葉を言い、私に相槌を求める。
この人は根っこから意地悪な男だ。











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