悪魔の諸事情。


柚美はもう何も未練はないとでもいうように艶やかに微笑み、目を閉じた。

そうしてただ、おれが握るナイフを彼女に突き立てるのを、じっと待っている。


やってしまうんだ、おれ。やればもう、おしまいじゃないか……そうすればおれは魔界へ戻れるし、夕闇たちにも会える。

また、普通の生活に戻れるだけなんだから……。


風が、吹いた。

それに背中を押されるように、おれは柚美に近づく。

片手で柚美の身体を軽く抱いて、彼女の身体が実は小刻みに震えていたのに気付いて、だけどどうしようもなくて、おれはナイフを強く握り締め、彼女の腹部へと突き刺し……



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