悪魔の諸事情。
入り口で、見張りらしきことをしている天使がふたりいて、おれはそいつらに訊ねることにした。
「あの、ちょっと訊いてもいいか? おれの前に、誰か、人、来なかった?」
「きてないよ」
「誰も来てないよ」
「じゃあさ、ここの他に、天使協会への入り口ってある?」
「ないよ」
「他にはひとつもないよ」
おれが戸惑ったような表情で二人を見つめると、一人があっ、というような声をあげ、もう一人と顔を見合せ、悲しそうにため息をついた。
「……おい?」
「あなた、悪魔委員会委員に来させられたひと?」
「悪魔委員会に来させられた?」
二人が一気に訊ねてくる。おれが頷くと、
「大好きな人と一緒に行けるって、」
「そう言われて?」
おれはまた頷いた。
するとふたりは、さっきよりずっと悲しそうにため息をついた。
「言いたくないんだけど、」
「伝えるのも辛いんだけど、」