悪魔の諸事情。



……はっと、思いついた次の瞬間にはもう、あたしは行動を始めていた。



もしかしたら。


微かな期待を胸に抱いて、あたしは、やみよくんの絵を消し始めた。

本当は、彼の記憶はそれだけだから、消したくないのだけれど……。


だって、他に何もないんだもん。



あたしの力は、相手の絵を描くと封じられる。

つまり、相手の心を覗けなくなるの。

普段は人の心なんて、覗いてはいけないと思うし覗きたいわけでもないから、いつも絵を描いてる。


だけど……やみよくん。

何もわからない彼とつながるには、それしかないから。


だから、封印をとく。

やったことがないからわからないけれど、やみよくんの絵を全て消せば、きっと彼の心がわかると思うから。

そしてこれもやったことがないからわからないけれど、きっと……彼の心に話しかけることが、あたしならできるはず。


小さいときから怖がられて、疎ましく思っていた力が、今初めてあってよかったと思った。



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