悪魔の諸事情。
━━━━━━━YAMIYO#side━━

「柚美」

柚美を想って動けずにいたおれを動かしたのは、やっぱり柚美だった。


『やみよ、くん。

きこえてますか?』


「柚美!?」

おれは、顔を上げた。

絶対、柚美の声だ。


入り口のふたりの天使が、訝しげに顔を見合せている。

だけど、幻聴や夢幻なんかじゃない。

柚美の声だ。



『あたしの不思議な力のこと、知ってる?

人の心が、わかるって。

本当はいけないこととわかってる、だけど、やみよくんと話すにはこれしかないって思って……ごめんなさい……』


「柚美……きこえてる……」

『……実はあたし、ここ2週間の記憶がなくて、やみよくんのことも思い出せなくて。

だけど前に描いた絵で、やみよくんがとても大切な存在だったって、わかって。』

「悪魔委員会委員……記憶、消したんだ……」



『ね、やみよくん。

いま、どこにいるの?


とても、会いたい……』



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