君にKiss 【短編】

「いえ、助かりました…。」

彼は伏し目がちにそう言うと
お茶をすすった。


『私、高梨花梨(タカナシカリン)って
言います。歳は24。あなたは…』


「オレは…葛西光輝(カサイコウキ)。
歳は…26。この度は助けてくれてありがとう。」


少し幼さが残る顔に
私は年下だと思っていた。
私より年上な事に少し驚く。

彼は崩していた足を
正座し直し
私に向かって頭を下げる。


「申し訳ないけど、
もうしばらくオレをここに
置いてくれないかな。」


予想もしない彼の申し出に
私の頭は一瞬真っ白になった。

こんな経験は初めてだったから。

でも……

もしかしたら
このつまらない現実から
私は抜け出せるかも…

そう思った瞬間


『いいですよ。』


私はOKの返事をしていた。


「ありがとう!」


彼は嬉しそうに微笑む。

そして私たちの
奇妙な共同生活が始まった。


       *
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