姉 ときどき 弟
「今日の晩御飯は私が作ってあげよう!」

そう言って姉が台所に立ったのは3時間も前の話だ。
結論から言うと、ご丁寧にお米を洗った。
菌という菌が全て死滅するようにじっくりと、天下のライオン印を使って。
お米から香る清潔感漂う爽やかな香り。

農家の方々には本当に申し訳ないが、我が家のゴミ箱が重くなった。

そして次に犠牲になったのは、貴重な我が家のたんぱく質である。

俺は人生の中で、肉が金属のように光を反射する光景を見た事がなかった。
木材が炭化して輝くのは理解できる。
だが、肉が完全炭化するところを見るというのは初体験未開の地。

「ステーキ」

躊躇いもなく炭化物を紹介してくれた姉に、よく分からないがカッコいいと思えてきた。

「何時間焼いた?」

気づいてほしい。
桁がおかしい事。

「2時間くらいかな?」

気づかなかった。
期待を裏切らない。

「いつも作ってもらってばかりでしょ。だから今日はご馳走作ってあげたくて…」

兵器。
もはや兵器。
いじらしく、照れた様子で微笑み姉。

姉なりの感謝の気持ちなのだろうか。
そんな仕草をされたら、弟として断われるか?

いいや、ここで甘やかせたら終わりだ。

なにせ俺はシスコンな訳でもない。
現実を見せるのも、弟の役目だ。

「美味そうだな、イタダキマス」



人生初体験の救急車に乗った。
俺はシスコンかもしれん。
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