S-exchenge
2月も終わりに差し掛かっているという、この季節にこの場所は別天地であるかのように花に溢れていた。


『お花がたくさんあるのよ。』


そういやそんな風に言っていたな、と思い出しながら雨の所為か特によく薫る沈丁花の花の根元に屈み込む。


形良く刈り込まれた樹のそばに顔を近付けると、押し付けがましくない割りに自己主張の強い香りが俺にまとわりついた。


久し振りに嗅ぐ日本らしさを感じる香りを堪能しながら、俺は樹の根元へと手を伸ばす。


そして黒くしっとりとした土をひとつまみ取り、指の間でしごいてみた。
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