太陽(短編小説)
笑顔の花。
太陽みたいに笑うあの子に。
僕からの気持ちを。
遠く離れた可愛いあの子に。
僕からの気持ちを。


この太陽のような花に込めて。




あの子と僕は、たった二人の家族でした。親子でも、兄弟でもないけれど、僕たちは家族だった。
男の子なのに、笑顔の絶えないあの子は、僕の宝物だった。






なのに…なのに僕は、あの子を置いて、戦争に行かなくてはいけなくなった。国からの命令なら仕方のない事だったから。
あの子は泣いた。何時もの笑顔は消えて、あの子はただ涙を流していた。
もう中学生になるあの子は、それでも泣いてくれていた。
僕のために。
嬉しかった、だけど悲しかったんだ。






僕の国は負けて、僕は国に帰ってきた。あの子は、僕を待ってくれていたよ。
だけど…あの子の片足は無かった。戦争が終わって、帰って来ない僕を捜して捜して…その間に事故にあってしまったんだって。
あの子から…足と一緒に笑顔まで奪ってしまっていたんだ。





お帰りなさい、とあの子は言ってくれたけれど…笑ってはくれなかった。
僕は静かにあの子を抱きしめた。何も言えなかった。ただ涙が止まらなかった。
あの子も…泣いていた。





僕とあの子の生活が戻った。
僕はあの子に秘密を作った。
少しだけ、本当に少しだけの秘密を。


一番暑い季節になった。
あの子は背が伸びて、少しだけ表情が出るようになった。







一番暑い夏の日。兄さんが秘密を教えてくれました。
背よりも高い草を掻き分けて兄さんは進みます。


草原を抜けると………一面の向日葵。みんな、みんなコチラを向いて咲いていたのです。







あの子は笑いました。
満面の笑みで。
あの子から奪われた笑顔、あの子の元へと戻ったのです。






何時の日か戦いが無くなり、何時の日か…笑顔の花が咲くように。



END
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