きっと、君を離さない
「可愛い子ね」
「・・・ああ」
「もう!悠ちゃん、そこは菜緒の方がかわいいよ、でしょ」
「あ、ああ。そうだな」
「ちょっとぉ!」
頬を膨らませて怒る菜緒。
「でもほんとに、高校生なんだね。それなのにしっかりした子だったね」
「ああ」
あんな礼儀正しい彼女なんて、初めて見たけど。
いつも感情的な彼女しか知らないから。
「・・・どうしたの?悠ちゃん」
「ん?いや、それほしいの食べていいよ」
「ほんと?じゃあ、どれにしようかなぁ」
瞳を輝かせて春香ちゃんが持ってきた果物を吟味する菜緒を横目に。
近づいたようで、全然近づけていなかった距離に肩を落とした。