きっと、君を離さない
春香ちゃんが帰ってしばらくしてやってきたのは池内。
「よ」
「おー」
そんな簡単なあいさつを交わす。
「なんか、噂で傷口を広げたって聞いたんだけど」
「情報はやいねー」
「お前、なにやってんだよ」
「ほんとなにやってんだろ」
情けなくて涙も出ない。
彼女を傷付けた。
真っ青な顔で。
あんな顔させるつもりなかったのに。
「春香ちゃん来てたのか」
「ご名答。草ちゃんってエスパー?」
「アホか。わかりやすいんだよ、まったく」
「・・・俺に心を開いてくれなんて、無理なのかな。ただ、知りたいだけなのに・・・」
傷ついた心を少しだけでも癒したい。
そう思うことはいけないこと?
扉から、ノックの音が聞こえる。
初めてノックして入ってくる人。
そんな人、見舞いに来そうな人でいたか?