きっと、君を離さない
「そんな世界から、一人の男の子が救い出してくれたんです」
「・・・」
「彼は、春ちゃんに全てを教えてくれました。幸せも、愛も、希望も、夢も。全部彼に教わったんです」
「・・・健太?」
話を聞いていた池内がボソッとそう呟いた。
俺と江梨子さんが池内を見た。
「池内・・・?」
「知って、いるんですか?」
「え、いや・・・。大石が搬送された日、混乱してた春香ちゃんが何度かその名前を呼んでたから」
「そうですか・・・」
そうだったんだ。
モヤモヤとした気持ちが生まれる。
「彼は、運命だと春ちゃんに言ったそうです。永遠だと」
「・・・彼は」
声がかすれた。
聞きたく、ないような。
それでも、知りたいような。
「死にました。交通事故で」