きっと、君を離さない



「よく考えろよ」



池内はそう言うと帰っていった。



池内は、俺に春香ちゃんの事を忘れてほしいんだと思う。
菜緒のためにも。



菜緒の事は大切だ。
高校の時からもう5年も付き合ってるんだから。
出会って数か月の春香ちゃんよりも長年付き合ってきた菜緒を取るのが普通なんだろう。



でも、俺が菜緒を選んだとして、春香ちゃんはどうなるんだろう。
俺が春香ちゃんを選んだところで、春香ちゃんがどうなるかなんて思えないけど。



春香ちゃんに、優しく手を差し伸べる誰かが現れてくれて、再びその闇の中から引き揚げてくれるのなら。
でも、そうじゃなかったら?
そんな人現れなかったら?


春香ちゃんは、いつまでも真っ暗な闇の中。





そんなの、悲しいじゃないか。
そんなの、辛すぎるじゃないか。



人は支え合うから人であって。
支えがなければ簡単に倒れてしまう生き物だ。


その日が来るのを知ってて、俺は逃げるの?


誰かが現れるのを期待して。
そんな確証のない“もしも”を期待して、知ってしまった真実から俺は逃げるの?



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