きっと、君を離さない


悠斗が入院をして1か月。


季節はすっかり冬に変わった。

12月の最初の土曜日。
毎日通っているお見舞い。

私は今日も悠斗の病室に来ていた。



「ああ、どんどん春香ちゃんからの貢物の数々が増えていく」

「・・・増えていくもなにも、最初に持ってきた花は枯れて捨てたし、果物だって食べてるじゃないですか」

「あのね、なくなったからといって消えたわけじゃないんだよ。俺の中に思い出の品としてどんどん蓄積されていくわけ」



なにを熱く語っているんだろう、この人は。
どうでもいいけど。
私は、持ってきたリンゴをむきながら考える。




「ね、ウサギリンゴにして」

「・・・嫌です」

「なんで」

「そういうのは彼女に頼んでください」

「けちー」




ふて腐れてベッドに寝転ぶ様は、子どものよう。





はぁ。と一つため息を吐く。
悠斗が向こうを向いているうちに、一つだけそっとウサギリンゴを作った。
そっと棚の上に置いたお皿に乗せる。




そして、ウサギにしていないほうのリンゴを悠斗の前に差し出した。



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