きっと、君を離さない
「バカ、こんな冷え切ってるじゃないか」
「大丈夫です・・・。着込んでるので」
私の冷たくなった手に触れながら心配そうに呟く彼に、そう言った。
「マフラーしかないの?手袋は」
「持ってないんです」
「ええっ?それ、買った方がいいよ。もっと寒くなるよ」
いいの。
健太が言ったんだ。
手袋がなくても、俺の手で温めてあげるよって。
だから、寒くなんてないの。
冷たくなんてないの。
私には、彼がいる。
だから、あなたが私のせいで苦しむ必要はないんだよ。
「退院おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます。おかげさまで無事退院いたしました」
礼儀正しくそう言う彼がおかしくて、少しだけ微笑んだ。